June 16, 2005

Fuse-In : Detroit’s Electronic Movementレポート(2/2)

Nowonmediaの友人、TAKA TSUTSUMI氏から頂いた、5月28〜30日にデトロイトで行われたFuse-Inのレポート後半。

彼はデトロイト・テクノに関してnowondvdにて「テクノ・ミュージックの発展を探る」という特集ページも書いている。ぜひご覧になってください。

レポート前編はこちら
DAY 2 NO UFO 5月29日(日)
この日は撮影クルーもDVDの物販スタッフも足りていたので、比較的自由に、夜のModel 500のライブを中心に見ようと思っていて、アンダーグラウンドステージのMarco Carora、Misstress Barbara, Adam Bayerあたりを見たいと思っていたが、アンダーグラウンドステージに人が多すぎたので、結局ほとんど近よらなかった。

Julius “The Mad Thinker” 12:00-13:00 Fuse-In Main Stage

(写真20 Julius “The Mad Thinker”)
この日の最初のメインステージ、まだ駆け出しのDJさんらしくて、マネージャー(たぶん彼女かなんか)がプロモーションをがんばってました。DJとしてはきれい目のテクノ&ハウスを中心に良い感じでした。

Brown Brothers 13:00-14:00 Fuse-In Main Stage

(写真21 Brown Brothers)
テクノ・ロックバンド。音はヒップホップ的なビートで、途中でB-Boy & B-Girlがステージに参加し、ブレイクダンスをステージ上で披露。ギターのお兄ちゃんがナルナルしていて、生理的にちょっと…

Punisher 14:00-15:00 Underground Stage

(写真22 Punisher)
撮影クルーに進められて見に行ったPunisher。デトロイトのエレクトロ・ミュージック音楽雑誌Detroit Electronic Quarterlyにもインタビューがのっていた、最近注目されている女性アーティストのライブ。機材はKorgのElectribe SXのみを使用。ハードでミニマルな音の世界。図太いベースで昼間から多くのレイバーを踊りくるわせていました。

Gren Underground 15:00-17:00 近所のブース

(写真23&24 Gren UndergroundとプロダクションのCraig)
近所の機材屋のブースであまりにも心地よいハウスのセットを回しているDJさんがいるので、近くのお兄ちゃんに聞くと、なっなんとGren Undergroundだと判明。前半はディープ・ハウスにはじまり、後半はシカゴの伝統アシッド・ハウスのセットを披露。彼のパーティのお仲間達も沢山集まって、あったかいアンダーグラウンドなパーティの空気が漂ってました。Grenとは仲良くなって、Mix CDをくれました。このブースが出していたキャッチコピー“Keep DJs On The Street”が妙にマッチしていました。

Scan 7 17:00-18:00 Fuse-In Main Stage

(写真 25 Scan 7)
UR軍団ならでは覆面姿で登場。比較的古めのアナログの機材を駆使したハードコア&エレクトロな激しいセット。かっこ良かった!アルバムもうすぐ出るらしいです。

Model 500 22:00-23:00 Fuse-In Main Stage

(写真 26  Model 500 No UFO shot)
テクノのオリジネーター、ホアン・アトキンスの非常にレアなライブ。アナログ機材を多数繋ぎ、ホアン&2人の3人での演奏。後ろの2人は機材をコントロールし、ベースなビートを担当。ホアンはヴォコーダーを使いロボテックな声で歌っていました。また、娘さんがステージ前で踊っていて、ホアンもそれに気がつき、会場に紹介するなど、これまたホームタウンのアットホームな雰囲気が出てました。Model 500の名曲“No UFO”やCybotron時代のテクノの青写真の曲“Clear”もやって、(わかる人だけ)だいぶ盛り上がっていた。非常に貴重なライブなのはわかっていたが。。。。Alexander Robotnikが見たかったので、30分で退場。(ホアン・ファンの方ごめんなさい)

Alexander Robotnik 22:30-24:00 MusicLogical Stage

(写真 27  Alexander Robotnik)
何故か呼ばれている気がして(多分、電波受信してたんでしょう)駆け足でやってきた、ミュージックロジカルのステージでのイタロハウス親父Alexander Robotnikのライブを体験。永遠と続くMoogシンセの和音にテンポのよいハウスのビート。螺旋階段を延々と上っていくような感覚で1時間半、踊りっぱなし、最高!去年末日本にも来ていたらしいのだが、このおっさんこんなに良かったとは、脱帽!歌うカラオケライヴって聞いていたけど、今回はコンピューターを使ったライヴで、おっさん、ブースの中で踊りっぱなし。会場は老若男女、人種を超えてみんな笑顔、笑顔、そして自分の音に酔うRobotonikのおっさんの最高の笑顔。2日目をしめくるる最高のパフォーマンスでした。

この他にも夕方のStacey PullenのDJはパッーカッションのライブを交え、非常に盛り上がっていました。また、メインステージの23:00からはヒップホップのRedmanが乱入したそうです。そして、メインの最後のKevin SaundersonのDJは、突然の雨の中、多くの人が立ち去らず、踊り続けていたそうです。撮影のプロデューサーのマーコ曰く、「ケヴィンの最高のセット!」だそうです。(自分はRobononikのおっちゃんにやられてました)。


DAY 3 FINAL TRANSMISSION 5月29日(月)
最終日はDVDの物販の人数が足りなくなってしまったので、ほぼ一日中Fuse-InのDVDの販売のお仕事を手伝っていた。 なので、見れたのも近くのメイン・ステージのみだったが、Octove OneとURのライブをステージ上で体験できたので、何も言うことないです。最高の瞬間でした。

19:00-20:00 Octave One Fuse-In Main Stage

(写真 28&29  Octave One)
430 WEST主催のバーデン兄弟のユニット、Octave Onceの激しいテクノのライブセットを披露。このあと、弟や ケヴィンの奥さんAnn Saundersonを率いて、ヒップホップ&歌ものハウスのライブに移行していった。自分としては彼らのハードなテクノのほうが好きなので、前半のほうが良かったかな。ステージ脇で機材の使い方とかじっくり拝見させていただきました。

21:30-23:00 UR , Galaxy 2 Galaxy, Los Hermanos, The Martian Fuse-In Main Stage

(写真 30 UR)
そして、待ちに待ったUR軍団の15年ぶりのデトロイトでのライブステージ。この時だけは(URらしく)ステージ上のビデオ撮影がいっさい禁止され、ちょいと厳粛な雰囲気。裏方で働く多くのスタッフもこのURのステージを非常に楽しみにしていて、みんな彼らの演奏に身を任せながら、最高の瞬間を一緒に楽しみました。(なので詳細レポを)

Galaxy2Galaxyのバンド形態で、まず名曲“Return Of The Dragon”で幕が開ける。会場はフューチャリッスティック・ジャズな演奏に度肝を抜かれ、そしてThe Martianの“Ultraviolt Images”で一気に銀河をかけぬけ、徐々にテンションが上がっていくと、次はURお得意のハードエレクトロな曲へと展開。それから惑星に再び戻っていくかのようにThe Martianの音の世界へと戻っていく。


(写真 31 UR)
「これはまだウォームアップだ。」
とMCが入り、おばちゃんダンサー3人が紹介され“Timeline”にあわせて、デトロイト式のダンスを披露する。


(写真 32 おばちゃんだんさー)
おばちゃん達のハッピーなダンスの姿に会場からも拍手喝采。おばちゃん達も笑顔で手を振って答える。


(写真 33 おばちゃんダンサー ブース後方から)
その間に、ステージ上ではいそいそと次ぎの演奏の準備が進められ、映像によってLos Hermanosの登場が告げられる。リーダーのジェラルド・ミッチェルの指揮奏により “The Very Existence”がスタートし、グルーヴィーなベース、キーボードプレイヤー同士の息のあった演奏のかけあい、それを支えるリズム隊のドラム&パーカッション、そして息の合ったブレイク。全てが完璧な演奏!

“The Very Existence”の演奏が終わると、MCでキーボードを弾いていたメンバーの1人はまだ11歳の少年だと告げられ
「彼がフューチャー・オブ・テクノだ。」
となんとも熱い演出。


(写真 34 UR 11歳のメンバー)
ローザ・パークスに捧げた曲 “Inspiration/Transition”によって、人生の転機を歌った後には、MCが我々の心の奥底にある存在について観衆に問いかけ、そのテーマを題材とした曲“In Deeper Presence”がスタートする。

叙情詩的なテクノの世界に会場全体が浸り、MCは続けて会場に
「自分の中のソウルを感じるか?」
と問いかける。そして休む間もなく、“Aquila”で会場全体が踊り狂い会場のテンションは最高潮に達する。


(写真 35 ジェラルド・ミッチェル)
かなりの興奮状態に拍手喝采の嵐。そしてステージは赤い証明が当てられ、厳かなムードに。ネイティブ・アメリカンのダンサー達が美しい衣装をまとって、現れ。MCによってRed Planetとは火星ではなく、彼らアメリカ原住民がその歴史で追いやられた土地の事であると伝えられ、The Martianの“Journey To The Martian Polar Cap”曲に合わせて彼らは激しく儀式的な踊りを舞う。


(写真 36 The Martianの神聖なステージ)
パフォーマンスが終わると、ダンサーの一人がマイクに向かい彼らの部族の戦争と太鼓にまつわる民話を伝えてくれた。それはこんな内容だった。

遠い昔、戦争が起こり、多くの人が殺された。
ある女性は逃げまどって川の畔にたどり着いたが、そこで家族が殺されるのを目撃してしまう。
その時、彼女はビジョンを見る事となる。そのビジョンとは太鼓が多くの人達を結びつけるというものだった。
彼女はドラムを自分の部族へと持ち帰った。そしてそ部族には平和が訪れた。
「これはファンに捧げる。君達に捧げる曲だから、この場にいる全ての人達に踊ってもらいたい。」
そういって、最後に世界にURの存在を大きく知らしめた名曲中の名曲 “Jaguar”が始まる。

“Jaguar”ではその場にいる全員が踊り狂った。スピーカー脇のスペースで我を忘れて音に身を任せていると、気がつけばそこには舞台のクルーの女の子や、イギリスからサウンドシステムを設置にしてきたエンジニアなど、みんなが一つになって踊っていた。多分、一生忘れる事のない美しい瞬間となった。


(写真 37 Galaxy2Galaxy)
こうしてURのステージは終わった。ついにURの総帥マッド・マイクはステージには現れず、また名曲“Hi Tech Jazz”の演奏はなかったが、彼のスピリットをURのメンバー達のソウルフルな演奏と最高のステージ演出で伝えてくれた。ステージの下にいる群衆を眺めながら、彼らが言うように音楽を通して、一人でも多くの人達が理解と人間の奥深くに眠るソウルを感じ取ってくれたらと思った。またそうした音楽を伝えるのも自分たちの役目なんだと感じた。

23:00-24:00 Mos Def Fuse-In Main Stage

(写真 38 Mos Def)
フェスティバルの最後を飾ったのはブロンクス出身のリリシスト、Mos Def。最近ハリウッドでも活躍するだけあって、すごい人気。それまでの比較的親近感がわくアーティストと違って、セキュリティの警戒態勢が厳しくなったり、楽屋裏でのファンの取り囲みがすごかったり、色んな意味で別格の存在。楽屋で見るMos Def本人はそんな事がないのだけど、まわりのクレイジーな状況に、少し怖いくらいだった。


Fuse-Inを経験して

こうして、僕の初めてのデトロイトのエレクトリック・ミュージックフェスティバルの体験は終わった。撮影のクルーとして手伝っていたおかげで、バックステージにアクセスできて非常に楽しい経験もした反面、毎朝から夜遅くまで何かと拘束時間が長くてヘトヘトになった。しかし、ここでは書ききれないくらい、舞台裏で色んな人達に出会い、そして音楽を通して様々な人達と繋がる事ができた。

特に今年印象に残ったのはオーガナイザーのケヴィン・サンダーソンだ。彼はただ朝から晩まで、働いているだけではなく、時間が空いている時は子供をゴルフ・カートに乗せて会場を案内したり、家族サービスも忘れていなかった。同行していた撮影クルーのプロデューサーが、真夜中に撮影のアイデアを電話しても、それにきちんと対応していて、フェスティバルの代表としての仕事を24時間こなしていた。


(写真 39 子供達と舞台裏にいるケヴィン)
また、毎晩、音が鳴り止み会場から人が帰り始めると、一斉に会場を綺麗に掃除している多くのスタッフの姿が印象的だった。彼らや運営に関わった多くのボランティア・スタッフの仕事ぶりもすばらしく、こうした地元の人達の努力がフェスティバルを影でサポートしているのだと感じた。


(写真 40 深夜すぎ、メインステージを掃除するスタッフ)
また、会場に訪れた人達のバラエティの広さにも驚かされた。もちろん白人のレイバー風の若者が7割方なのだが、明るい時間にはお昼を食べながら音楽を楽しんでいた黒人の老年カップルがいたし、親子で訪れている人達など年齢人種を問わず多くの人達が音楽を楽しんでいる姿が印象的だった。


(写真 41 メインステージから)
こうして、いかにデトロイトのアーティストコミュニティによるクリエイティブな力が地域の文化を活性化させているかを肌で感じる事ができ、音楽が人々のソウルを結びつけ、刺激し、そしてさらに新しいものを生みだしてくかを体験する事ができた。

そして、こうしたデトロイトの音楽を日本の我々がサポートしているのも強く感じた。このフェスに登場したアーティスト達は地元のクラブイベントなどを行っているのは少ないらしく、むしろヨーロッパや日本で彼らはパフォーマンスを行い、地元デトロイトでは他の仕事に従事したり、レーベルの運営を行いながら、製作活動を行っているらしい。

今回の旅でもお世話になった、東京のCisco Techno店やDisk Unionのクラブショップ、神戸のUnderground Galleryなどではこうしたデトロイトの瞬の音をいち早く入荷し、日本に紹介しているので、興味を持ってもらえればぜひ(ネット/リアル店舗を)訪れてくれたらと思っています。

Cisco Records (on-line)
Disk Union Club Shop (on-line)
Underground Gallery(on-line)

また、7月24日(日)にはデトロイトソウルが世界に放つブラックサイケデリアの結晶MoodyMannがバンド形態で世界初ライブをLIQUIDROOMの恵比寿移転一周年を記念して来日し、8月27日(土)〜28日(日)にはMETAMORPHOSE 05が開催され、Galaxy2Galaxyがヘッドライナーとして再び来日します。日本はデトロイトをはじめ、世界有数のアーティスト達のライブ公演が楽しめる非常にラッキーが土地なので、こうした機会に彼らの音楽を体験し、活動を実際にサポートしてもらえたら、一音楽ファンとして幸いです。

Moodymann Live in Japan 2005
日程:7月24日(日)午後5時会場
場所:LIQUIDROOM Ebisu
出演:Moodymann Live with Andres, Pirahna Head, Paul Randolph, Roberta Sweed and Nikki-O
DJ : Andres, Pirahna Head

info LIQUIDROOM 03-5464-0800


METAMORPHOSE 05
日程:8月27日(土)午後4時開場予定〜8月28日(日)午後10時終了予定
場所:日本サイクルスポーツセンター(静岡県伊豆市修善寺)
出演: Live: GALAXY2GALAXY, TORTOISE, OUT HUD, GREEN VELVET, ISOLEE, ROVO, BOOM BOOM SATELLITES, HIFANA … and MORE!
Djs: GOLDIE, SEBASTIEN LEGER, MARCO BAILY, EYE, FUMIYA TANAKA, QHEY, KAORU INOUE, KIHIRA NAOKI, DJ BAKU, DJ SHIRO THE GOODMAN, DJ NOBU … and MORE!

TEXT BY TAKA TSUTSUMI

Taka Tsutsumi (Nowonmedia, Inc. 所属)
DVDレーベルnowondvdにてクラブミュージック系の映像作品を中心に幅広いジャンルのDVDのライセンス/日本版の企画&製作を担当。8月22日(金)に2003年〜2004年のデトロイト・エレクトリック・ミュージック・フェスティバルのアーティストパフォーマンス映像を収録した「RUFF CUTS 2005 presented by Fuse-In Detroit」(仮)をnowondvdより発売予定。

主な担当作品:
映画配給/DVD作品!
SCRATCH」、「Freestyle」、「Welcome To Death Row」、「Maestro
DVD作品
「Hype!」、「DJ Qbert’s Complete Do It Yourself Vol.1 & Vol.2」、「Intellect Vol.1 & Vol.2」、「マーティン・スコセッシ 私のイタリア旅行」、「フェリーニ〜大いなる嘘つき」、「アメリカン・ニューシネマ」、「SALVADOR DALI」、「No Maps〜ウィリアム・ギブスンとの会話」、「Moment Utopia」
DVD作品(字幕制作も担当)
Movement 2004」、「X-Mode Vol.4〜Vol.9」、「Vision Quest The Gathering 2002」、「Last Hippie Standing
ご意見、ご感想は taka@nowonmedia.com まで


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by CAB at 05/06/16 23:54
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Fuse-In : Detroit’s Electronic Movement

by wa on 05/06/21 23:48
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