【調教】初音ミクにチャレンジ
最近
ニコニコ動画見てると、
VOCALOD2「
初音ミク」を使った作品が沢山で、出来はピンキリだけど、なかなか楽しそう。一気にDTM人口増えたんじゃないかというような雰囲気です。
そこで、かなりオッサンの僕もこの前の日曜夕方某ビックカメラで周囲の視線をかなり意識しつつ買ってきてチャレンジしてみました。
曲は数年前に歌謡曲っぽい歌ものを作ってみようと思って作りかけだった曲があったので、そのデータをそのまま利用。歌詞の才能がないので、当時友達に歌詞作れる人いないかなぁとか訊いて回ってたら、友人のお母さんが作った詞というのをもらいました。それが、素敵な詞なんだけど言い回しがやはり古かったり文学的だったりする部分が多かった(原作は最後が「君はいずこ忘れない」だし ^^)ので、例えば「それを浜崎あゆみが歌ったらどうなるか?」とか考えつつ、大幅にアレンジしました。
まずは一発目なので、VOCALOD2の編集環境 VOCALOD2 Editor や、初音ミクの使い方に慣れる事を重視しました。
あと、ニコ動にアップされている作品を聴いて不満に思ってた所、例えば
- 発音のクリアさや自然さ/不自然さにかなり「ばらつき」がある
- ブレス(息継ぎ)を考えていない編集が多くて、聴いていると息苦しくなる
というような点があるのですが、本家クリプトンにアップされているデモ曲などでは不自然さがかなり少ないわけです。なので、いわゆる調教と呼ばれているパラメータの編集でどんだけ自然な感じまでもっていけるのか、を習得するというのが第一目的かな。
【追記】
CollaboReason に、この曲のREASON用のデータを置きました。REASONを使ってコラボ/アレンジしてみたい方、ぜひどうぞ。
編集の詳細やmp3データは続きで。
歌詞入力
曲データは歌詞メロディ/コーラスパートも含めてREASONで既に作って有ったのでMIDIでExportして、VOCALOD2 Editor に読み込みます。発声という特徴上、VOCALOD2 Editor では1トラックで同時に2音発声する部分があると修正しろと言ってくるので、そういう部分を修正。
最初は全て「あー」で発音するようになっているので、1音ずつ歌詞を入力していきますがこれ結構タイヘンで根気が要りますね。(追記:初出時は知らなかったのですが、歌詞の流し込み機能があり、かなり効率的に歌詞の入力はできます。)歌詞の入力完了時点の出力はこんな感じです。
ボーカル001(MP3)
- 発声が続く部分をうまく処理しようとしているようなのだけど、子音をはっきり発音しない部分がちょくちょくある
- (ブレスを設定していないので、)ブレスを意識していない
- 声がこもった感じが強い
- 長音の部分のビブラートが効き過ぎていて、ロボ声っぽさを強調している
- 長音の部分で音程が狂う(本来は発声が続く部分で滑らかに音程を変えるための仕様のようです)
これらを治していくために、まずは先人の知恵を拝借します。
VOCALOID @wiki:小技やちょっとした知識
をかなり参考にさせていただきました。
発音の修正
まずは、発音がおかしい部分を治してゆきます。特に子音がクリアに出てない部分や不自然な部分を修正。音符をダブルクリックで歌詞編集のモードに入って更に[Alt]+[↓]キーを押すと発音記号の入力が可能になります。ヘルプファイルに発音記号の一覧があるのですが結構不親切な記述っぷりなので、かなり手探りで試してゆきました。(ちなみに、英語用の発音記号も掲載されているのですが初音ミクのデータには英語用の発音記号に対応する音声データは殆ど入ってないんですね。試しに英語にしかない発音記号を入れるとその部分は無音になってしまいます。これが初音ミクが英語が苦手だっていう事の理由なんですね。)実際にやったこと:
- ナ行、ガ行の音が不自然に感じる/弱いと感じる場合は鼻濁音を試してみる
- 例:夏の:な[n a]→な[N a]
- 例:大声:ご[g o]→ご[N o]
- 「っ」を明確にしたいときは前の発音の最後にタ行子音を入れ、タ行の音の前に隙間を空ける
- 例:買って:か[k a]て[t e]→か[k a] あ[a tS] [隙間] て[t e]
- 「じょ」が不明瞭な時は[dZ o]ではなく[Z o]を試してみる
- 母音が「あ」の音に続く「わ」は「うあ[M a]」にしちゃう
- 例:疑わず:う[M]た[t a]が[g a]わ[w a]ず[dZ M]→う[M]た[t a g]が[a]わ[M a]ず[dZ M]
- 母音が「う」の音に続く「お(を)」は「うお[w o]」にしちゃう
- 例:僕を:ぼ[b o] く[k M] お[o]→ぼ[b o] く[k M] お[w o]
- ラ行、バ行 は初音ミクのデータ自体、かなり子音が不明瞭なようなので、いろいろ試しました
- 子音をひとつ前の音に持っていく
- 例:二人:ふ[p\ M] た[t a] り[4' i]→ふ[p\ M] た[t a 4'] り[i]
- 子音と母音を分ける(効き目は薄い)
- 例:ら[4' a]→ら[4' a] [隙間] あ[a]
- 別のトラックに移動し、前後の音の影響を受けないように発音させる(但しラ行、バ行では効き目が薄い)
- その他
- 例:熱戦:ね[n e]え[e]せ[s e]ん[n]→ね[n e]え[e ]せ[s e]ん[n]
- 例:みつめてる:め[m e] て[t e]→め[m e t] て[e]
- 例:ひとつふたつ:つ[ts M] ふ[p\ M]→つ[ts M p\] ふ[M]
- VEL:ヴェロシティパラメータをいじって、なるべく子音が不自然にならないように調整(効き目が薄い)
- 子音の音量的な調整には音符ごとのパラメータ、ディケイとアクセントを何箇所かいじりました
- それ以外で発音がイマイチの部分は別トラックに移動して単音再生させました
残る問題:解消手段を知っていたら、ぜひお知らせ下さい:
- 「か」を延ばすとケロ声な印象になる
- ラ行、バ行はいろいろやってみたが、相変わらず子音が不明瞭
これらは、もしかしたら元のデータの特性なんじゃないかな?とも思います。DTMソフトとしては異例の売り上げとなっているそうですので、クリプトンさんでぜひ、修正されたデータをアップデータとしてリリースしてくれないかなとか密かに思ってます。
ブレスの設定
VOCALOD2 Editor ではブレスを[br1]〜[br5]という発音記号で出すことができます。但し歌と同じトラックに置くと、短いブレスは殆ど発声されなくなりますし、歌の方の発音にまで影響を与えてしまいます。従って、ブレスは別トラックで編集した方が良いようです。
自分が歌ってるつもりで、どこで息を吸うのか考えてブレスを置いてゆきます。当然息を吸っている間、声は出ないので、ブレスの部分と歌の出る部分は重ねないようにします。
この曲では手抜きなんですけど、ほとんど[br1]を使ってます。
声の篭りを修正
ここで曲中で色々なパラメータ上げ下げをやってみて、それぞれのパラメータの特徴をまずは大雑把に掴んでみます。で、付属のSinger EditorでMikuをアレンジしたシンガーを作ります。
- ブレシネスは0のまま。
- 高音域がもう少しクリアに出るように、ブライトネス(BRI)を+10、クリアネス(CLI)は+16。
- ジェンダーファクターは下げた方がクリアになりますが下げすぎると、天国のヨッパライもしくは始めてのチューみたいな声になるので、少しだけで -10。
- あとは曲の雰囲気にあわせで、ハキハキした感じを少し減らすために、オープニングを -10。
値の設定はおおざっぱなんですが、これで少しクリアな感じの歌声になります。ここで作成したシンガーをVOCALIOD2 Editorに戻って最初の方で各トラックで選択してあげます。
あとはミックスするときのEQ調整でなんとかしようと思ってます。
ビブラートを修正
ビブラートは、綺麗に歌ってる印象が欲しい部分ではほとんど邪魔にしかならないようです。特に長音の部分では不要です。但し短い音の部分ではいい雰囲気を出してくれる場合もあるようなので、延ばしている音を中心にビブラートをOffにしていきました。
音痴なのを修正
最近のリリースについている黄色い紙に書いてある注意書き「デフォルト歌唱スタイルの調整手順」に従って、全域に渡って「ベンドの深さ」を修正します。
「設定」メニュー>デフォルト歌唱スタイル>ピッチコントロール>ベンドの深さ を8%に設定し、[現在のトラックに適用] ボタンを押します。これで、長音部分で音程が狂うのがほとんど無くなります。
パラメータ(DYN, BRI)編集でより歌に表情をつける
クリプトンのページで聴けるデモソング01が結構表情豊かです。ありがたいことに、同ページではこのデモソングのデータを配布してくれています。これを参考にしてパラメータの編集にとりかかります。
デモデータを見ると、歌に表情を加えているのは主に DYN(Dynamics)と、BRI(Brightness)で、時々
PIT(Pitch Bend)が使われているのが分かります。
- DYN: 声の大きさに関連します。自分で歌ってみたときのアゴの高さに比例しそうな感じです。±10%の範囲ぐらいで、歌に合わせて編集してゆきます。
- BRI: 高周波成分の調整ですが、デモデータではブレス前等の長音の声が消え行く部分で下げる方向に使われています。よって長音の消える前の部分に−15%ぐらいの範囲ですーっと下げるように適用します。
- PIT: ピッチベンドですが、この曲では使っていません。
さてさて、ここまで適用した現時点の完成版の音声はこんな感じです:
ボーカル004(MP3)
だいぶまともになったでしょうか。WAVE出力をしたら、VOCALOD2 Editor での作業はこれで終わりです。
DAWでの作業(REASONで仕上げました)
REASONがDAWかどうかは別の議論だと思うので飛ばしますが、WAVEデータを声の出ている部分だけ切り取って、REASONに読み込ませます。サンプラーに読み込ませて、EQで主に高音部を持ち上げてます。こんな感じ:
更にコンプとマキシマイザーをかけて音量のばらつきと、音量の小ささを補正します。
(今回は、ここ効かせすぎたので、DYNで調整した部分の効果がちょっと消えてしまったかもしれません)
ミックス段階で、ディレイ、ヴォーカル用のリバーブに更に全体用のリバーブで調整します。
あまりかけすぎるとカラオケのエコーみたいになってクドイので、くどくなりすぎないようにするのが肝心です。
あとは伴奏で折角のボーカルが聞きにくくならない程度にmixバランスを整えて完了。そんな感じです。完成したMP3はこちら。
【初音ミク:オリジナル】2003夏(仮) MP3
おまけで、VOCALOD 用のデータも置いておきます。
vsqデータ
どちらも非商用、引用元明示の条件で使っていただいてかまいません。
謝辞等
VOCALOID @wiki まとめて下さっているかた、掲載されている情報の提示元の皆さんのノウハウを参照させていただきました。
ニコ動にコメントくださった皆さんもありがとうございます。この曲この後修正するかどうかは、まだ決めてませんが、御指摘ごもっともというコメントばかりでした。特にニコ動では擬似同期生が売りなんで、やっぱり曲にも皆で合唱しちゃうような盛り上がるところが無かったのがイマイチだったなと思ってます。
あと、元々四つ打ち好きなのもあって、下モノの手持ちバリエーションが無いんですよね。vsqデータ提供しますので、素敵な伴奏にしてくれたバージョンなんかも薄っすら期待してます。
面白い製品を開発/リリースしてくれたYAMAHAさん、クリプトンさんにも感謝しています。しているので、「ラ行」、「バ行」などがもう少しクリアに発音されるアップデータを提供してください。ぜひ。
by CAB at 07/11/03 11:42