どうだったらCDは輸入規制されるのよ?
レコード輸入規制を盛り込んだ著作権法改正案に関連するいくつかの質問主意書に対する答弁書が公開されています。
facethemusicさんが、質問と答弁を並べて書いていらっしゃるので、正確な文面での対応はそちらを参照してください。
この答弁に関しては、小倉弁護士も「
衆議院議員はみな、今、試されている。」というエントリーで検証しており、
このような回答書で「これで洋楽の並行輸入は大丈夫」だなんていって著作権法改正案に賛成する衆議院議員については、官僚の誤魔化しを見抜く能力がないか、官僚と一緒になって国民を騙そうとしているかどちらかであるから、いずれにせよ、国会議員たるべき資質を有しないと評価可能です。
と述べています。
質問と答弁に関してはは概要をまとめた方が2chにいましたので一部修正して引用します。本文と合わせて参照してください:
文化審議会著作権分科会のあり方に関する質問主意書/
答弁書 概要:
Q1:法律を作ってる文化審議会著作権分科会のメンバーが業者ばっかりで消費者の声を代表してる人がいないのはおかしい。やり直す必要があると思うがその予定はあるのか?
A1:ふさわしいメンバーだったと思うよ(だから理由はなし)。もう分科会は終わってるけど、今後同じような事する時はふさわしいメンバーにするよ。
Q2:以前にもこれを再三、要求してきた人がいるが理由も告げず無視されてきた。その理由は何か?
A2:ふさわしいメンバーだったから消費者団体は入れなくてよいと思った。消費者の観点も参考にした事にするために6〜8回には消費者団体も入れたじゃん。
Q3:しかも文化審議会著作権分科会は一般の人が聞くことさえできないし、議事録に発言者の氏名がない。こんなに秘密主義にする理由は何か?
A3:広い会場が取れなかっただけ。名前書かないほうが活発な議論が行われると思った。
Q4:文化庁著作権課では関係者間の協議・合意を必要としているが「関係者間で合意形成が進められつつある事項」として提出された書類に消費者団体が入っていたことが一度もない。その理由は何か?
A4:関係者ってのは業者のことで消費者を入れる必要はない。(つまり業者の都合だけで法制化することに疑問をはさむ余地はない) ただし分科会では消費者団体のメンバーに質問をしたから審議は深まったと思ってる。
今国会提出の著作権法の一部を改正する法律案に於ける実務の取り扱いに関する質問主意書/
答弁書 概要:
Q1:次のケースはどうなるの?(アメリカを例として)
Q1-1:ジャケットに「US Version」と印刷されている場合。
Q1-2:ジャケットに「US Only」と印刷されている場合。
: などなど。
A1:例示されているものは全て輸入業者が「その情を知る」ものと取り扱うことはできない。すなわち、輸入販売可能。
Q2:アメリカのCDの安い中国盤が日本に入ってきているとか苦情が出た。どの程度の値段なら不当な侵害と見なすのか?
A2:複製や頒布の許諾にかかる対価を算出する条件等が記載された契約書などの提出をお願いして判断する。(具体的基準はなし)
Q3:ジャケット等に「日本国内頒布禁止」との表示のないCDを平行輸入で
売ってた業者が実はそれは平行輸入禁止だから、とアメリカのレコード会社から
訴えられた。この場合、著作権法違反になるの?
A3:実際起きてみないと分からない。検察当局が適切に対処する。
Q4:日本のレコード店がアメリカのレコード会社から、実はそれは平行輸入禁止だから
と言われて仕方なく全部捨てた。この場合、国はこの店に何らかの保障をしてあげるの?
A4:保障しません。
Q5:洋楽の輸入禁止はないとか言ってもそれは例えばアメリカのレコード会社が権利を行使しないという事を前提にしている。そんな不確かな法律が今まであったりするのか?
A5:別にそのような前提はおいていない。
(すなわち、海外のレコード会社が権利行使することは特に排除していない)
Q6:アメリカのレコード会社が輸入禁止をしてきた場合、日米租税条約との相乗効果で明らかにアメリカの利益が
増えて、日本の利益が減るがそれについては認識しているのか?
A6:別に必ずしもアメリカの利益が増えるって決まってもいないでしょ。
それに AVEX の依田が四月十五日の分化会で発言している通りアメリカの
五大メジャーは輸入禁止にしたりしないと言ってるそうだし、大丈夫だよ。
知的財産戦略本部構成員及び内閣官房知的財産戦略推進事務局員の人事と構成に関する質問主意書/
答弁書 概要:
Q1:内閣の知的財産戦略本部と内閣官房知的財産戦略推進事務局員に消費者の代表が入っていないのは、
推進計画にある「消費者利益等の観点を含めて総合的に検討」という部分と一致せず、おかしいのではないか?
今後、消費者の代表者を入れる予定はあるのか?
A1:知的財産戦略本部は定員10人のうち公正取引委員会がひとり入っているから大丈夫でしょう。
消費者代表を入れる予定はありません。
Q2:内閣官房知的財産戦略推進事務局員とはそもそも何をやっていた人達なのか、
過去の経歴を明らかにしてほしい。
A2:内閣官房知的財産戦略推進事務局員の構成メンバーは、公正取引委員会一人、総務省一人、法務省一人、
財務省一人、文部科学省五人、厚生労働省一人、農林水産省一人、経済産業省七人、独立行政法人科学技術振興機構一人、
独立行政法人日本貿易保険一人、政策研究大学院大学一人、社団法人日本音楽著作権協会一人、キヤノン株式会社一人、武田薬品工業一人、
松下電器産業株式会社一人、三菱電機株式会社一人、ユニ・チャーム株式会社一人である。
(つまり総務省、法務省、財務省、文部科学省、独立行政法人、大学を実務代表として公正取引委員会を消費者代表として、
それ以外を業者代表とすると、実務:消費者:業者=10:1:15)
著作権法の一部改正案に係る還流防止措置に関する質問主意書/
答弁書 概要:
Q1:そもそもこの改正は環流防止措置が趣旨であったはず。
だから既に日本で販売したことのあるCDだけを対象とすべきではないか?
法文の「商業用レコードを自ら発行し、又他の者に発行させている」は「国内で発行」と解釈していいのか。
A1:この法文は「国内において、自ら発行し、又は他の者に発行させている」という趣旨である。
(国内において自ら発行し、又は他の者に「国外も含めて」発行させている、とも解釈できる文で相変わらず曖昧。
くり返しを入れてわざわざ限定を強くしている部分を外している、つまり日本盤のない洋楽CDについても
前もって輸入禁止措置をすることも可能という解釈ができるような文に作り替えてある。)
Q2:日本製CDの環流防止措置が趣旨であるなら、さらに「最初に日本で発行された」ものでしかも「日本で発行された後に」海外版ができたもの、という限定をすべきではないか?
法文だけでは曖昧なのでその趣旨を確認したい。
A2:当然のごとく既に日本で発行されていることが前提とされる。
(最初に日本で、かどうかについては無回答。多くの洋楽CDの輸入禁止措置は「最初に日本での発行」を条件とすれば回避可能だが、そうする意志はないとみていいと思える。)
まぁ、今取り扱ってる洋楽が急に輸入規制されることは無さそうだけど、やっぱり将来は全然どうなるか分からないですね。気持ち悪い法案だなぁ、まったく。
しかし、特に分科会関係の質問に関してはナメた答弁が多いですね。質問もちょっと弱いところあるけどね。
by CAB at 04/05/26 07:34