June 07, 2005

またACCS…ファイル交換ソフト利用者数、経験者数に大きな誤り

先日のACCSおよびRIAJ(日本レコード協会)の発表『ファイル交換ソフト利用者は約130万人、利用経験者は400万人を超える「ファイル交換ソフト利用実態調査」結果』に基づき、マスコミが記事を出しましたが、それを受けて、OTO-NETAでも、
ファイル交換ソフト、利用者130万人、経験者400万人強に」 というエントリーを作成しました。

そのエントリーにコメントを頂いたのをきっかけに、ACCS/RIAJがこの人数を導き出すのに利用した資料「ブロードバンド契約数等の推移【平成16年9月末現在】(総務省)」を確認したところ、ACCS/RIAJの発表は、資料の数を適切に扱っておらず、ユーザを二重にカウントしている等誤った計算をしていることが分かりました。実際のファイル交換ソフトの利用者数、経験者数は、ACCS/RIAJの発表の半数に近い利用者数79.3万人、経験者数185.0万人と推測されます。

ACCS/RIAJのプレスリリース を見ると、
2004年9月末日現在のわが国におけるインターネット契約数は、約4,718.9万契約(携帯電話・PHS端末インターネット接続サービスの契約数、及び、IP−VPNサービスの契約数除く)とされており、この契約数4,718.9万をインターネットの総利用者数と想定しました。
とあります。この4,718.9万に対してアンケートで得られた、
2005年1月の調査時点で、ファイル交換ソフトを「現在利用」している人は、インターネット利用者の2.7%、「過去に利用」の経験がある人は6.3%
をかけて、「現在利用」は約127.4万人、「過去利用」は約297.3万人という結果を導いています。

この発表が基にしている、総務省の報告「ブロードバンド契約数等の推移【平成16年9月末現在】」を確認しますと、確かに「7 携帯電話・PHS端末インターネット接続サービスの契約数」と「8 IP−VPNサービスの契約数」を除いた値を全部足すと、確かに4,718.9万になります。

ところが、この資料の項目1番は「インターネット接続サービスの契約数」で、それ以外に足し算をしている項目2〜6番はアクセスサービスの契約数となっています。

(a)接続サービスというのは、いわゆるISPの事で、Yahoo!BB, @nifty, OCN, BIGLOBE,... 等の事です。
(b)アクセスサービスというのは、NTTのBフレッツ,Yahoo!BB光, TEPCO光など、ISPに接続するまでのサービスです。

ACCSの調査ではこの(a)接続サービス契約者数と(b)アクセスサービスを足しているので、同じユーザを2回数えて誤った「インターネットの総利用者数」を求めている事になります。

上の図を参照して欲しいのですが、枠内の番号は総務省の資料の項目番号に合わせてあります。 白い線で囲った枠が、ACCS/RIAJの資料で加算している部分です。(2)〜(6)の契約者は(1)の内訳になるので、二重に加算されているのが分かると思います。

昨日日中に、この資料の公表元の総務省データ通信課の方にこの解釈で間違いがないか確認してみましたが解釈の仕方は間違っていないようです。
確認した内容:
  • 項目1は、文字通り、ISPの契約者数である。
  • 項目2〜6は、フレッツ等のアクセスサービスの契約者数である。
  • Yahoo!BB等のインターネット接続サービスとアクセスサービスの両方を兼ねている企業の場合には、接続サービス、アクセスサービスそれぞれに対して報告を受けているので接続サービス、アクセスサービス両方に入っている。
  • この資料には電話回線を使ったモデム等でのダイヤルアップ接続の数は入っていない。
  • 8 IP−VPNサービス、9 広域イーサネットサービスの主な利用者は企業である。
これに基づいて考えると、最も問題なのは、先にも書いたように、 接続サービスの契約者数と、アクセスサービスの契約数を加えて2重にカウントしている点
他に、企業利用がメインの「9 広域イーサネットサービス契約者数」が含まれているのもおかしいですし、公衆無線LANを家庭のISP契約なしで使う利用者もめったに居ないので、「6 公衆無線LANアクセスサービスの契約数」が含まれているのもおかしいです。

よって、この総務省のデータに基づくのであれば、「インターネットの総利用者数」に一番近いのは、項目1番の「インターネット接続サービスの契約数」のみです。(このデータは上位35社だけの契約数ですし、1契約で複数ユーザが利用する家庭があったり、一人が複数ISPに加入している場合が考慮されていないので、正確な値とは言えません。)

1 インターネット接続サービスの契約数の 2936.0万人に対して、2.7%、6.3%をかけた値、 ファイル交換ソフト利用者数79.3万人、経験者数185.0万人が正しい推測値になります。

このように、誤った調査報告を流したり、過去の事件などを見るにつけACCSという組織には不信感を抱かざるを得ません。(あ、この文は個人的な見解です)

私の解釈に誤りがあればぜひご指摘ください。

元のリリースを受けた各社報道:
PCWEB
InternetWatch
CNET Japan
japan.internet.com
MSN-Mainichi
Livedoor Computers
Scan Daily Express
知財情報局
nikkeibp.jp

追記:前回のエントリー「ファイル交換ソフト、利用者130万人、経験者400万人強に」のコメント欄にて、最新のインターネット白書2005のデータに基づいた算定値を求めています。残念ながらACCS/RIAJの報告よりも増えてしまいました。
by CAB at 05/06/07 00:38
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Comments

こちらの産経新聞の記事を引用してちょっと計算してみます。
『家庭用高速通信の加入者数(平成十六年末)は、ADSLの千三百五十万件に対し、光はわずか二百六十万件と足元にも及ばない。』
合計して約1610万件、これにケーブルTVが300万として1910万件
アンケート結果ではブロードバンド接続が9割を超えていたことを踏まえると、この値に2.7%とか6.7%を掛けた方が、推測値として正しそうに思えます。

http://www.itmedia.co.jp/news/0306/18/njbt_02.html
こんな懐かしい記事も発掘しました。韓国人じゃないけれど「声の大きいものが勝つ」になりつつあるのが何とも・・・

by 十六夜 on 05/06/17 23:48
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